仕事と心のDiary

デトックスのための文章

『スタンド・バイ・ミー』に滲み出る、子役達の実生活と苦悩。

昨日、金曜ロードショーで『スタンド・バイ・ミー』がやっていた。観よう観よう、と思いながら観られていない旧作の映画というのが今までに結構あり、この映画もそのうちの一つだった。多分、昨日テレビでやっていなかったらこれから先も観るタイミングを失っていたと思う。テレビ局にリクエストしてくれた視聴者の方に、感謝しかない。

 

晴れた中、考え事をしながら車を走らせる冒頭のシーンから惹きつけられた。主人公のゴーディには、小説を書く才能がある。彼は友人のクリスとテディ、バーンとともに死体探しの旅に出た夜、森で火を囲みながら、自作の小説を彼らに聞かせる。「面白い」「続きはどうなるの?」と、友人たちは感想を伝え合った。彼らは、まだ分かっていなかった。小説より自分達の身に起きることの方がよほど”物語”であり、そして必ずしも、続きを描ける出来事ばかりではないということに。

 

テディとバーンがまるで中身のない会話をしながら歩く後ろに、ゴーディとクリスが続く。「皆と離れたくないから、進学コースには行かないよ」と話すゴーディを、「お前のように才能を与えられた奴が俺たちと同じ所にいたら駄目だ。お前のいる場所じゃない」と諭すクリス。そしてゴーディもその前夜、「自分は何をやっても、結局大人から利用される世界に生きているんだ」と話すクリスの背中を押した。二人は既に、純粋な子供ではなくなっていた。

 

子役は皆魅力的だけど、クリス役を演じたリヴァー・フェニックスには特に、表情・セリフ・美しさのすべてに惹きつけられてしまう。私生活で親の信仰するカルト集団と性被害の中を生きていた彼は、その後23歳で薬物中毒によりこの世を去ってしまう。リヴァーの背負ったものが、クリスが家庭環境を語る姿にも重なる。

 

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この映画でバーンを演じたジェリー・オコンネル以外は全員、出演時期に精神的虐待やドル箱として搾取されるなど親との確執を抱えており、またロブ・ライナー監督自身も「俳優の息子」とレッテルを貼られることに苦しんだ少年期があったという。偶然なのか、監督の采配なのかは分からない。けれどスティーブン・キングの自伝を超えて、この映画には作り手たちの実生活から滲み出た機微が詰まっている。

 

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