『秘密と嘘』という韓国ドラマで「彼女はお前が手に負える女じゃない。沼のような女だ」と陰で釘をさされるような悪女が出てくるのですが、韓国ドラマって本当に、欲に狂った人とか、元は良い人だったのに欲に負けて様変わりする人がよく登場するなと思います。
このドラマの悪女(ファギョン)には恵まれない生い立ちがあり、嘘によって幼少期に財閥に引き取られます。地位のためなら自分を愛してくれる人も簡単に裏切るし、人が何を失おうと知らん顔。そこに「そんな彼女を理解できるのは自分しかいない…」と(勘違いした)男性が現れ、彼女の思惑通りに悪事が進んでいきます。
このファギョンのキャラクターが、「役立たずのブタ!」と叫びまくっていた全盛期の小沢真珠を見ているようなのです。カルメン(ドS)交じりのマノン・レスコー(可憐)という感じでもあります。
この書籍では、マノン・レスコーは『健気を装う女』。出会った男性が自分に運命を感じているようだと悟った瞬間、「明日から修道院に入らなければいけないの…(あなたと会えなくなるから、行きたくないけど…)」と言う。
どうしてほしいかを敢えて言わず男性に委ねている所に、相手の想像力を掻き立てる感じがあります。本当に、そもそも本気で彼の元を去る気があったらこんなこと言わないと思うし、天性で相手の本質がビビビっと理解できてしまっている感じ。元々マノンの両親は彼女の依存症的な性格を見抜いていたから修道院に預けることにしていたわけだけど、修道院の方が崩壊しそう。
男性は危なっかしいマノンに「この女を救えるのは自分だけだ」と尽くすが、マノンはお金にしか興味がないし、その「出所」には一切興味がないので、彼がどれだけ友人を失くそうが借金抱えようが、差し出してくれたお金に最高の微笑みを返すだけ。
このマノンの「健気で、“あなたがいないと駄目なの”を巧妙に出しながら相手に自然と貢がせる、その実貧乏嫌い」な面と、カルメンの天然の魔性が少しずつミックスされ、悪魔化したのがこの『秘密と嘘』のファギョンだと思うのです。
ネタバレになりますが、ファギョンは自分を追いかけてくる男性(ジェビン。町の食堂の息子)に最初は見向きもしないんだけど、ある時自分が養子だとばれて財閥から追放されそうになり、「ジェビンを財閥の孫にでっちあげて結婚してしまえば、自分も財閥に残れる」と考えます。
ジェビンはまんまと騙されて財閥入りしますが、自分が本当はその家の孫ではなく、ファギョンがすべてを仕組んでいたと知ります。ジェビンは傷つき、ついに最愛のファギョンと離婚します。…となるはずなのに、雲行きが違う。凡人の感覚だと、この状況なら立場が逆転してファギョンがジェビンにすがるの?と予想するけど、よく考えたらマノンとカルメンが男にすがるはずがない。
ファギョンは逆に「あなたなんかもういいわ」と言い放ち、自分に言い寄っていた他の財閥の息子を誘惑し始めます。しかも何度も、「ジェビンの目の前で」。そして、「あなたが本当の孫じゃないと財閥に暴露するのなら、私は彼の元に行きます」と宣言。ジェビンは憎しみと嫉妬に苦しみ、結局デ・グリューやホセと同じ道を辿るのです。
ファギョン役のオ・スンアさん、美しすぎます。