仕事と心のDiary

デトックスのための文章

眠れない夜の先にあるもの

最近仕事で遅くなることがあり、先日出社した際は近くに泊まってしまった。部屋に着いて食事した後、22時過ぎにお風呂に入り、上がって時計を見たら23時半近かった。どう考えても浸かりすぎだったが、その日にあった出来事が湯船にひとつずつ溶け、なくなっていくような心地の良い時間だった。その後すぐベッドに入ったが、疲れているのになかなか寝つけず、最後に時計を見た夜中2時からしばらくしてやっと眠気が訪れた。

 

次に目が覚めた時、パッと目に入ったクーラーの電気表示が部屋全体まで照らしているようで何となく目が冴えてしまい、またしばらく眠れなかった。なぜだか分からないが、目を閉じながら「灼熱の砂漠を延々歩いているラクダと自分」を想像していた。

 

そこからいつの間にかまた寝たようだが、今度は「誰か、この部屋でいまシャワー浴びてる?」 という派手な流水音が聞こえてきて目が覚めた。何が起きたのか状況がつかめず、洗面所を覗いたが誰もいるわけがなかった。近隣の部屋の音が響いたのだと思うが、大袈裟ではなく大雨のような音に包まれながら、濡れそぼった心持ちでまた目を閉じた。

 

しかし、止んだと思うとまた降り注いでくる定期的な洪水音に、「いや、絶対誰かこの部屋で5分おきにお風呂入ってるでしょ」と再認識した。けれど何てことはなく、開けっ放しだった洗面所のドアを閉めたら洪水音も聞こえなくなった。安堵したら、次第にまどろみ始めた。多分明け方だったと思う。

 

そして次に目を開けた時には、チェックアウトの2分前だった。

 

携帯片手に30秒ぐらい状況がつかめなかった。相変わらずクーラーの電気表示だけは暗闇の中で煌々と光を放っていたが、カーテンの分厚さが優秀すぎたために外の明るさがまったく分からず、「こんなに暗いのに朝なわけないじゃん」と地球のサイクルを最後まで疑ってしまった。携帯の目覚しをとめた記憶も皆無だった。青天の霹靂。寝ぼけた頭で電話を探し、フロントにチェックアウトを延ばしてもらえないかお願いした。

 

チェックアウトまで1分もない所で電話しているのだから、「この人、絶対今まで寝てた」と思われるのは当たり前なのに、そうは思われたくない羞恥心が一応あり、起きぬけ特有の低い声で若干余所行きの話し方をしている自分が滑稽だった。チェックアウト時刻が10時で、夜中に洪水が起きる宿には注意。

 

清々しい朝というものを経験してみたい。