仕事と心のDiary

デトックスのための文章

エリック・サティの不思議な魔力

You tubeで洋楽のプレイリストを色々探していたら、「おじいさんがピアノに向かって座っている昼下がりのヨーロッパ風アパートの一室」のサムネイルが出てきて、観てみたらエリック・サティを始めとしたピアノ曲集でした。

 

子供の頃、自分が習っていたピアノの先生が教えてくれるのはいつも明るくて華やかな曲ばかりで、でも私は本当は短調の曲が好きだったから、先生に習うのを止めた頃から割と暗い曲を好んで弾いていました。当時はそれを作曲した人の背景を考えることもあまりなくて、ただ曲調に惹かれていただけだった気もするのですが。

 

大人になってからは、明るい曲、華やかな曲の良さに気づくようになりました。現実を生きる中で圧倒的な華と明るさを創作するということは、決して当たり前のことではないと感じるようになったのが大きいかもしれません。昔の作曲家達の時代というと戦争や離別も多く、それにどんなに鍛錬したとしても、悲しみをまったく感じない心なんてきっとこの世の中に存在しない。明るい曲は天性の才能というより、その作曲家が明るいものを現実の中に見い出し、理想を描こうとした姿勢の結果なんじゃないかと感じます(もちろん、お金持ちのパトロンのご希望だったということもあると思いますが)。

 

でも、そんな実感も一気に吹っ飛ばし、人を深い森の中に閉じ込めてくれるのがサティかもしれない、とプレイリストを聴いていて改めて感じました。

 

エリック・サティの曲って穏やかで暗くて、明るいメロディもたまにあるんだけどそれすらも何か悲しい、という不思議。やっぱり短調の曲には惹き込まれます。「退屈の具現化」と言われているグノシエンヌ(特に第一番)なども、誰かが窓辺から退屈そうに雨の庭を眺めているような情景が思い浮かんで、大好きなのですが。

 

貧しい生い立ちで、宗教団体を立ち上げたり恋人を追いかけまわしたりと変わっていたので異端児呼ばわりされていたサティ。でもそういう生き方が、人の心を波立たせるような曲の創造に繋がっていったのかなと感じます。

 

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